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湿血帯不快指数

湿血帯のお知らせ、管理人の雑記など、じめじめ

SS『海気譚』
まーたルイライです、と言いながら内容は8割モブライ。
・海ドライブデート
・オボログルマ入手経緯
・ライドウ候補時代の話
要素を箇条書きにするとこの様な具合ですが、やはり後ろ暗いというか、やるせない読後感になると思われます。ルイライ部分は結構甘いです、イチャついてます。
pixivにもUPしてあるので、そちらの方が読み易いという方はそちらでどうぞ。
以下、ネタバレ有りの個人的感想です(長い)▼

気に入っているシーン

「点けてよ」
 云いながら、ぽいと此方の膝上に箱を投げ寄越した。その咥えたままの煙草に点火しろ、という事だろう。
 先程の折れたマッチは除外して、一本取り出す。箱をスライドさせて閉め、側面のザラついた部分で擦り上げる。一瞬何かが薫ったが、火花らしきものが散るばかり。風も無いのに、一向に点きやしないのだ。
「…………クックッ……この下手糞」
片手間の雑なやり取りが、距離感の近さを物語る。そしてマッチを擦れないルイ、手品(魔術)は使えるのに。

「ああライドウ、ちょっと待ちなさい」
 仰向けのまま手招きすれば、半ば渋々ライドウが引き返す。靴は脱がず、玄関土間から畳までめいっぱい乗り上げ「何?」とぼくを見下ろしてきた。
「忘れもの」
 腕を伸ばし、外套の襟をかすめて彼の項に触れる。くっと引き寄せれば察したのか、既に唇は薄く開き、此方の舌をすんなり受け入れた。
何イチャついてるんだこいつらは。

「忘れないうちに、おさらいしないと……ねえ?」
 魔的とも云える笑みだった、普段の紺野ともまた少し違う。俺と適当に語らい、飯を平らげ、畳に転がる無邪気さが無い、消え失せていた。この姿をカラスの古老に見せているのだろうか、演技か素かも判らない。
この頃から内部で乖離し始めている。どちらが真も偽も無く、両方夜。

「これまで育てた意義を捨て去るのなら、生まれを重んじれば良い。でなければ何の為に孤児を拾ったというのか、高い魔力、そしてMAGの質に価値を見出したからだろうに。特に、彼に〝慰めて貰っている〟者は今一度、真剣に考える事。一個人の欲望で、此の選定を左右せぬ様、以上」
比較的マトモな人居ったんか!!!!

「俺が欲しかったっ、その葛葉の名前は俺が、俺がと、ずっと願ってきたのに、だのにお前!」
 ハンドル中央を叩いたら警笛が鳴った、そんな機能が有るとは知らずびびった。外の海鳥達が一斉に飛び立ち、暗い雲間に消えていった、羨ましい。
「俺も飛びたい」
既に精神生死の境という局面にも関わらず、未知の機能にびびり、拍子に飛び立つ鳥を見て「羨ましい」と思い、そのまま海に飛ぶ。この衝動は如何でしょうか!? 作者は希死念慮ゼロなので、そういうキャラ達を書くのにいつも試行錯誤。

「だから、脚じゃなくて頭狙えって云ったに」
「……寝ていたので、覚えがない」
「それ起きてたって事だら! ははっ、相変わらず可愛くねえなあ!」
 発砲音が続いた。念の為の一発を残し、すべて撃ち込んだのだろう。
 ぼくはライドウに歩み寄り「大丈夫か」とは訊かずに、MAGで判断する。彼はかなりの緊張状態にあった。
バレバレの嘘を吐く珍しい夜、しっかり憶えてたのねという描写(そもそもこいつは記憶力が凄まじい)そして具体的な哀しみを自覚出来ず、緊張状態に陥っている。裏切られた際もだが、悲哀は無かった。夜の中に〝かなしみ〟という感覚が無いというか、かなり希薄な気がする。執筆中、憑依させて語らせるのだが、悲しみ方が本当にわからないらしい。

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