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湿血帯不快指数

湿血帯のお知らせ、管理人の雑記など、じめじめ

古書
二次創作とあまり関係無い記事です。
ここ最近蒐集している古書を記録します、8割は執筆資料ですが2割は個人的嗜好によるラインナップです。復刻版ではなく当時の書籍である為、防虫香と共にジップロックに暫く入れ、紙魚が居ないか様子を見ます(今のところ見た事は無い)
国立国会図書館デジタルコレクションで読める本も有るのですが、スキャン紙面が陰って可読性が悪い物も有る事と、自分が「紙の方が読み易い」タイプの人間なので現物を入手したいと思うわけです。そして何より「当時の本の質感」が判る事が、本当に大きい(創作資料的に)
出来れば今後、国立国会図書館のサーチにもかからない地下本などにも手を出したいと考えています(これは創作関係無し)歯止めが利かなくなると怖いので、古書漁りは年に数回に留めるペースで進行中。

左から
宗教と性的迷信の研究(大正13年..1924年)
呪術と宗教(昭和7年..1932年)
鋸山奇談 -A TALE OF THE RAGGED MOUNTAINS-(大正14年..1925年)


ざっくり内容を記してありますので、興味有る方はつづきを読むからどうぞ↓



宗教と性的迷信の研究


(大正13年発行/著 光成信男/出版社 聚芳閣)

「変態心理 性之研究其他一二」の雑誌に連載した記事をまとめた書籍。前書きによると「性と宗教(コーヘン著」「黄金の樹液(フレーザー著」「性崇拝(ワール著」を参考にしたそうだ。
「原始宗教と性的迷信」「法悦の心理」の二章構成。推測だが、有名な金枝篇(自分は未読)と違うところは〝当時の日本〟における概念・観念・実例と照らし合わせて執筆される部分に有ると思う。日本人が日本の雑誌に書き下ろしていたので、そういった視点や対象でつづられている。


未だ大正の今日迄という一文が味わい深い。
鉛筆で線引きしてある箇所から、元の所有者が何を学ぼうとしていたのか妄想する。


書籍名の通り、人間心理(潜在意識)と絡む風習・宗教の例を多く記してある。集団の形態を維持する、支配する、そういった事に活かされてきた様子もあるが、畏れから自然発生したソレを利用するに至った雰囲気も感じられた。
しかし後書きで病的エクスタシーときた、面白い。この著者に関して少々調べたところ日本無産派文芸連盟に所属しており、児童向けプロレタリア雑誌「少年戦旗」に科学読物を寄稿していた(この辺の雑誌はしょっちゅう発禁処分を喰らってたみたいだ)


後ろにある宣伝も面白い、この聚芳閣(しゅうほうかく)なる出版社は1924年(大正13)~1929年(昭和4)まで出版活動していたらしい。


呪術と宗教


(昭和7年発行/著 永橋卓介,内田元夫/出版社 新撰書院)

「金枝篇」の三~六章をベースに翻訳した国内発書籍、金枝篇に先駆け発行された様子。索引が大変分かり易く、使い勝手が良い。様々な例が事細かに分類されているので、資料としては充分(イメージが掴み易い為、作品テーマに呪術が絡む際は気分転換に読む)
書籍タイトル通り呪術メインで、先程の「宗教と性的迷信の研究」との違いは、説明物量が呪術>宗教な点かと思う。例に挙がる集団の思想も、あくまでも俯瞰的な説明に思えた。
しかしこれが〝昨今読める金枝篇〟と、どの程度違うのかは不明。いずれ金枝篇を読んだ際にでも…




鋸山奇談 -A TALE OF THE RAGGED MOUNTAINS-


(大正14年発行/著 エドガー・アラン・ポー/訳 戸川秋骨/出版社 アルス)

装丁のが愛らしい「アルス英文学叢書11」にあたる書籍。鋸山奇談の単なる翻訳本と思いきや「左頁に原文、右頁に翻訳」という教科書の様なレイアウト。ページ下部には注釈も載っており、至れり尽くせり。


解説のきめ細かさよ、言葉自体も美しい。
多くのページに書き込みが見られた、この勉強熱心はいつの時代の人か?


61p.該当する日本語が無かった為吸血蟲と假(かり)に譯(やく)した〟とある。
127p.ブロオドウェイを〝東京の銀座から上野に達する通りのやうなもの〟と表している。
中學上級以上を対象にした英文叢書とある。

脱線するが、ポーで思い出すのは「アルンハイムの地所」の日本語版で〝誤訳されている翻訳本〟が有る事。
※「ポー短編集III SF&ファンタジー編(新潮文庫/2015年出版)」である。
本文引用と同時に原文を見たC氏が指摘して気付いた。この本では氣仙(シルフ)熾天使(セラフ)と誤訳されていた、SylphsSeraphの違いだ。引用自体にミスが無いとすれば…なかなか印象深い誤訳である。セラフよりシルフの方が、一般には馴染みが薄い気もするので、もしかするとそういう要因も有るかもしれない。

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