忍者ブログ

湿血帯不快指数

湿血帯のお知らせ、管理人の雑記など、じめじめ

「蠱る蟲」のプロット
発掘したので、掲載。プロットなので完全にネタバレです。
本を持っている方は、ここからどうやってネームに変化していったのか読み比べるのも面白いかもしれません。
C氏に渡した内容、そのまんまです。(見易い様に色だけつけました)
どうせ原稿には載らないと思って、平気でフェラとか注釈入れてるので注意。


蠱毒(仮)
セミの輪唱する初夏の中。ゲーセンの傍を通り過ぎる際、虫篭を持った子供達が店内からわあっと出てくる。
「おれのクワガタとケンカさせよー!」「ここから××んトコが近いじゃん」「やだよビンボーくさいもんアイツの家」
「ウチにスイカあるからソレ食わせようぜ!」「パピィが食べちゃうと困るからカゴから出すなよ!」

一瞬で遠ざかる喧噪、違和感に気付く人修羅。(新田と共に、半袖制服)

人修羅「なんでゲーセンから出てきてあの持ち物なんだ、虫網も無いし」
新田「最近UFOキャッチャーの景品でよく有るじゃん、クワガタとかカブト」
人修羅「はあ? ああいうのって森で採取するんじゃないのか」
新田「あっは、無茶云うなってオマエ、この辺じゃ公園ですら怪しいっての」

通過点に過ぎないが、ややうらぶれた雰囲気の狭い路地や、古い団地が奥に見える。
貼られているポスターが《不審な人を見かけたら~》《この顔にピンときたら》等、何かと不穏な物が多い。
(回想終わり、ボルテクスに切り替わる、人修羅も悪魔の姿で歩いている)

人修羅(なんかこの辺、通った事有る気がする)
 
ぼんやりと背景が記憶で一致していた。所々に残る電柱や建物の壁に、見覚えの有るポスター(ただし《犬を捜しています》が増えている)
経年劣化の激しそうな団地の棟が並ぶ。
蜃気楼の様に連なる棟と棟の狭間に、唐突にゆらりと現れる一戸建て。
何かの施設の様な、個人の家とは思えぬ雰囲気。

人修羅(言い値で買わされるより、先に自分で採取すれば良い)
人修羅(噂が本当なら、此処の屋敷で得られる《蟲》は間違いなくマガタマだ)
人修羅(あのデビルサマナーに喧嘩売られたら、今度こそ返り討ちにしてやる……)
イヌガミ『ヨウコソ、イラッシャイマシタ、ササ、ドウゾ奥ヘ……』

鉄の格子柵が厳重に囲む敷地に入って行く、アプローチ(庭園)の緑は彩度が低くドライフラワーの様だ。

人修羅「……牢屋かよ」(聞こえぬ程度に呟いたつもり)
イヌガミ『牢屋デハナク篭デス』
【ここでタイトル】
廊下は薄暗く、ぽつりぽつりとある照明が先をまだらに照らしている。
古めかしいデザインだが、決して埃っぽくはない。
先導してくれる悪魔はイヌガミ、ひょろんと長い胴にあつらえた給仕服が可笑しい。
千切れかけの首輪には、金のプレートがちょこんと付いている。

人修羅「他にも来てるんですよね? 《蟲》を欲しがってる連中」

何も説明が無い為、人修羅が焦れて問い質す。
前方を浮遊するイヌガミが、振り向きも停まりもせずに答える。

イヌガミ『皆様、部屋ニ集マッテオリマス』
人修羅「魔貨と引き換えですか、それとも……マガツヒとか、要求されるんでしょうか」
イヌガミ『ソレハ御主人様ガ決メル事。空イテルオ席ニ、ツイテ下サイ』

通された部屋はそこそこの広さがあり、長方形のテーブルを挟む形で椅子が並ぶ。
数体の悪魔は、図体に合わない椅子に無理矢理座る形。
椅子はひょろ長い背もたれ、独特なデザイン。

イヌガミ『デハ、御主人様ノ訪レルマデ御待チヲ』
人修羅が着席すると、部屋の扉を閉めて去るイヌガミ。
シンと静まり返る室内。シャンデリアや壁の灯りが有るものの、やや薄暗い。

キウン『お前も蟲マニアか?』

向かいのキウンが人修羅に話しかけてくる、答えるか否か思案のフリでスルー。
すると人修羅の隣に座るロアが分かった風な口で云う。

ロア『滅多に出てこない逸品だ、きっとこの全員には行き渡らん』
インキュバス『競売になったらきっとオレの勝ちだ、たんまりコレ(輪っかを作る)なら有るかんなァ』
キウン『いいや此処の奴もマニアなんだろ、納得いく相手にしか譲らない筈……つまり、同じマニアにくれるわけよ』
インキュバス『飾っておくだけェ? もったいねえー! あの蟲はナァ……ちょっとずつ舐めるんだぁ……すると、ビビっとクるのよビビッと』

悪魔達の雑談は次第に盛り上がる、聴きはするもののそっぽを向いて参加しない人修羅。
壁や部屋の隅には、様々な調度品や装飾が施されている。
洒落た洋館の様だが、どこか異質な感覚がある。

インキュバス『ただし、一気に喰うのはヤベエんだ……飲み込んで身体が破裂しちまった野郎を見た。ウメェんだけど、強烈なんだぁあの蟲は』
ロア『呑み込むだと? 貴様の様な下賤な輩の飴にさせるわけにはいかん』
インキュバス『あァ? 手に入ったモンをどうするもオレの自由だろがァ』

険悪な空気が漂っている、皆の脳内に“こいつ等と奪い合う事になる”という推測が巡っている。
ゴグマゴグ『長イ、イツマデ待テバ良イ!』

痺れを切らしたゴグマゴグが声を荒げる。

ゴグマゴグ『我慢大会デモサセラレテイルノカ?』
ロア『確かに、情報が少なすぎる故、不信感が拭えん』
キウン『これで出された蟲が例のアレじゃなくって、ソコの標本みたいなムシだったらキレるな?』

ヘラヘラ笑いながらキウンが指した先は、壁の標本。
整然と並ぶそれは蝶や玉虫色の昆虫が展翅されていて、確かに今集まる連中の欲する蟲とは違う。
人間の嗜好品ともいえる標本を、人修羅も横目にじっと眺める。
項の角がピリピリと痺れる、何か違和感がある……
展翅される蝶達が次第に翅色を変え肥大化し、標本箱の硝子をシャボンの膜の様にすり抜け始める。
ピクシーやカハクの集団だ、擬態していたのだ。
群れる彼女達は不意打ちで羽ばたき、テーブルは押しやられ椅子は横転する。
咄嗟に退いた悪魔と、壁際に吹き飛ばされた悪魔とがいる。
人修羅も壁へと吹き飛ばされる。

キウン『なんだあコイツ等はあ』(なんかわざとらしい)
ロア『待ち伏せとは卑怯な!』

笑う翅者達は数で押し、ジオ系やアギ系でたたみかけてくる。
燃える調度品をやぶ睨みしつつ立ち上がった人修羅だが、その首筋を突如噛み付かれる。
ハンティングトロフィーと思われた馬頭が、壁からぬるりと胴を出ていた。
それはケルピーへと正体を変える。更に歯を突き立ててきて、人修羅の首に血がほとばしる。

人修羅(やっぱり悪魔の話なんてロクなもんじゃないな)

人修羅は後悔しつつ、ケルピーの眼を潰し、眼孔に指を突き立て頭を鷲掴みにして首から引き剥がす。
暴れるケルピーをそのまま引き裂き殺すが、マヒかみつきだったのか自由が利かなくなり床に倒れ込む人修羅。
己の血やケルピーの藻がまとわりつき、身体中がびっしょり(★ウェット&メッシー要素)
返り討ちされボトボト落ちているピクシーやカハクは、山になっていた。
キウン『ハメられたのか?俺達』
ロア『その様だが……脆弱な者共で助かった』
インキュバス『いってぇぇあっちぃぃ』(カハクのアギでか、身体の一部がいまだ燃えている)
キウン『おい、そこのボウズはなんだ……死んだのか?』(人修羅を指している)
ロア『脱落したのなら放っておけばよかろう』
キウン『よかねぇよ! だって……話が違えし』
顔を見合わせるキウンロアインキュバスゴグマゴグ

キウン『……白状するわ、ハメようとしたのは俺。実のところ、さっき襲いかかってきた連中とグルなのさ』
ゴグマゴグ『成程、妙ナリアクショント思ッタ、大根役者』
キウン『うるせえ。俺より後に入ってきた奴を仕留めれば蟲が貰える ってんで、“先客”共と手を組んでた』
ロア『共謀した同志に襲われた、と? そもそも成功したとして、貴様等全員分の蟲など用意されているものか』

やいのやいのと言い合い始める悪魔達を、絨毯に寝そべるまま呆れて見つめる人修羅。

ロア『因みに私は、 此処に集った者の内、誰かが蟲を所有している と聞いていた』
ゴグマゴグ『※』
キウン『なんだそりゃ、もう誰かが持ってるってのか? おい、お前は何か聞いてたか?』(インキュバスに問う)

黙ってニヤニヤと焦らすインキュバス。

インキュバス『コレ云っちゃうと抜け駆けできねぇジャン』
キウン『勿体ぶらねえで教えろ』
人修羅(俺だけ大した事教えて貰ってない……)
インキュバス『ヒトの形したヤローが持ってるとか聞いたなァ……?』
一斉に人修羅に注目が行く、人修羅は危険を感じているが麻痺が抜けきらない。
キウンが人修羅の着衣を無理矢理引っぺがす。
下着はビリビリ。靴から靴下までポイポイ脱がす。
全裸にした人修羅の四肢を髭で拘束し、ぐぐっと晒す。(★拘束・顔面騎乗?)

キウン『隠し持っちゃいねえのか』(人修羅の臀部が塞いでるので、なんとなく声が籠る)
インキュバス『しょっぺえなあ、オレ様のコレ譲ってやろうかァ?』(人修羅の股間を眺めつつ、己の股間を誇張する。堪らずカアッと上気するが、ウーッと微かな威嚇しか出来ない人修羅。)

ゴグマゴグ『肉ノ中ニ、隠シ持ッテイルノカモシレン』

ゴグマゴグが人修羅の胎をなんともいえぬ手の先で圧迫する。
眉間に皺を寄せた人修羅が首から上を思い切り捻り(吸い込む)ファイアブレスを吐く。
ゴグマゴグが蒸発し、もうもうと蒸気が立ち込める。その隙間から、微かに笑う人修羅の口元が垣間見える。

ロア『胎に蟲を飼う人間もどきが居ると、噂に聞いた事がある』

カタカタと髑髏は喋りながらも、眼孔から覗く蛇が人修羅の口をめいっぱいにこじ開け探り始める。(★疑似フェラ)
緩くもがきつつも、感覚が戻りきっていない四肢はキウンを振り解けない。
喉元まで抉られ、いよいよぐぐっと喉筋が蛇を押し戻す。
うぇっ、と蛇ごと吐き出したのはマガタマ。
他悪魔が全員それを凝視するが、目の前にしているロアが真っ先に飛び付く。
キウンも人修羅を放り出し、それに跳び付こうとするが間に合わない

ロア『む、ムシッ、蟲だああぁっ蟲っ、蟲!』

冷静さを欠いた髑髏の歯が、落ちたマガタマを咥え呑み込む。
すると恍惚とした面持ちをしていたロアにヒビが入り、溢れ出すマガツヒと共に爆ぜる。(スキルの「自爆」状態)
前面に躍り出ていたキウンも爆発に巻き込まれる。
人修羅はそのキウンの影なっていたので、ほぼ今の爆発での被害は無い。
汚れた絨毯床に這って、片手の指先を何らかの形に組んでいる。(麻痺が抜けきらないので、痙攣している)

インキュバス『はーあぶねェあぶねェ……だから呑んだらヤベエって、オレさっき云ってたろオイぃ』

物陰に隠れていたインキュバスが、砕けた残骸の中からマガタマを拾う。

インキュバス『皆バカ正直に喋るからっしょ(マガタマを見て)しっかし、他人の蟲まで手に入るたぁラッキー』

上座の椅子に寄りかかり、意気揚々と話すインキュバス。

インキュバス『オレはなぁ、本当は 椅子取りゲーム って聞いてたんだよォ……ヒトガタが持ってるなんざ、で・ま・か・せ』

椅子に堂々と着座しながら、ケラケラ笑う。

『さぁオレにくれよォ!? 最後に悠々と座ってたヤツが、此処の蟲を貰えるってコトなんだろ  お゛ぎゃっ』

みなまで喋らぬうちに、椅子の背もたれにバリバリと喰われるインキュバス。
上座の椅子に擬態していたピシャーチャが、ゆらりと屈み込み人修羅を覗き込む。
その牙が伸びた瞬間、ジオが奔る。
死体の山からもぞりと這い出たピクシーが、今度はメギドラオンでピシャーチャを散り散りにする。。
ピシャーチャ残骸の胎からはみ出たインキュバスの突起、その先にマガタマがゆらゆら引っ掛かっている。

ピクシー『んもー、まぁた異常対策忘れてたの? っていうかアタシを喚んでおきながらゴミ山に紛れ込ませるとか……』(さっきの指を組む所で召喚されていた)

引っ掛かっていたマガタマを外し、朦朧と膝をつく人修羅の口元へ押し付けるピクシー。
マガタマを呑み込み、ようやくよろりと立ち上がった人修羅。
ピクシーに裸をじろじろ見られている事に気付き、ストックに戻してからいそいそ着替える。(下着はビリビリなので、仕方なく素肌にズボン穿きこむ)
廊下に出ると、左右の壁紙がぐらぐらと模様を変えて積み上がったモスマン達になる。
もはやリアルか幻術か判らないそれ等が人修羅に押し寄せる。
建物の扉を開け放ち、モスマンの波を振り払いつつ庭(アプローチ)を駆け抜ける。
来た時と違い鉄柵は門も無く、全方位堅く閉じている。
アイアンクロウで数体のモスマンごと切り裂き、無理矢理裂け目を作る人修羅。
其処へ跳び込むと、ごろりと転がりこむ。
ハッと顔を上げると、狭い部屋に居た。
染みだらけの壁紙は継ぎ目が剥がれている。色あせた畳、薄い布団が部屋の隅に畳んである。
先刻の洋館とは全く雰囲気の異なる空間で、やや雑然とした一室。
簡素な学習机の上には、格子の裂けた虫篭が置いてある。
ブックエンドが立てる書籍は、教科書に混じって怪しげな呪術の本が幾つか。
投げ出されたランドセルからして、小学生の部屋らしい。
壁に貼られたグループトーナメント表の様な紙を、訝しんで睨む人修羅。
様々な昆虫や小動物の名前が書かれている、最後の一匹になるまで競わせた様な形跡が、その表から見受けられた。
そんな紙が、幾重にも壁に貼られている。
異様な気配を察しふすまを見ると、沢山のガムテープで開けられない様にしてある。
端(ふすまと壁の境)をアイアンクロウで裁断し、警戒しながらふすま戸を一気にザッと開ける。
押入れの中には、漬物用の大瓶から首だけ出ている犬の頭蓋が鎮座していた(首輪は朽ちずに巻きついたまま)

イヌガミ『オメデトウ』

その頭蓋が喋っていると錯覚して軽く声を上げるが、すぐに背後を振り返る人修羅。
浮遊するイヌガミは、あの屋敷へと先導してきたイヌガミだ(給仕服は無いが、同じ首輪をしている)

人修羅「……は、何がおめでとうだ……俺にだけ、何も教えてくれなかったみたいですけど」
イヌガミ『“篭”ダトイウ事実ハ、最初ニ伝エテアッタ』
人修羅「何が目的ですか、本当は持ち合わせてもいないマガタマで、釣っておいて殺し合いさせた? マガツヒでも喰らう気でしたか」
イヌガミ『蟲ハ、存在ス……イイヤ、創造サレル。虫篭ヲ覗クガ良イ』

イヌガミを警戒しつつ、机の上の虫篭を再度見る人修羅。
側面はそのままでも判るが、上蓋のせいで内部は見えない。
嫌な予感がしつつ、上蓋を取り払う。

イヌガミ『産マレタテダ』

虫篭の中には、ドロドロとした瘴気を纏ったマガタマがひとつ転がっていた。

イヌガミ『強サヲ求メテ蟲ヲ欲シタノダロウ、私ヲ作リ上ゲタ御主人様モソウダッタ』
人修羅「作った? その御主人様とやらは、何処に居るんです」
イヌガミ『私ノ中ニ居ル、共ニ在ル。シカシ私ハ此処ニ繋ガレテイル、遠クヘハ行ケナイ。此処デ、強キ呪イヲ創ルガ使命』

睨み合うが、イヌガミに攻撃の意思はない。

人修羅「俺は、マガタマが無いと生きられないから――」
イヌガミ『私ハ観テイタゾ、オ前ハ蟲ヲ吐イテイタ。既ニ蟲ヲ持ッテイタノニ……何故更ニ欲スル? ソレハ、強イ呪イヲ求メタカラ』
人修羅「戦いたくなくったって、周りが襲ってくるんだ! 強いマガタマじゃないと、俺だって生き残れない!」
イヌガミ『ダカラ、今回生キ残ッタオ前ハ、蟲ヲ得ル権利ガ有ル。ソノ蟲には、アノ場ニ居タ全テノ悪魔ガ凝縮サレテイル、持チ帰ルト良イ』

おぞましい物を見る眼で、改めてマガタマを見つめる人修羅。
催してくるものがあり、思わずそのマガタマを掴んで窓から投げ捨てた。

人修羅「あ……悪魔の悪趣味に、付き合ってられるか!」

退室しようとした矢先、ランドセルを蹴飛ばしてしまう。
ばらばらと中から散乱したノートや教科書には“ビンボー人”“虫だけがおトモダチ”など、心無い言葉がはみ出さんばかりに殴り書きされている。
足下のそれを見下ろし硬直する人修羅。

イヌガミ『蟲(まじ)コル力(ちから)ヲ求メタノハ、人間ダ』
部屋を抜け団地を抜け、外で荒くした息を整える人修羅。

人修羅(ああ……そうだ……マガタマ、替えないと……あのデビルサマナー相手にしてたから、力ばかり重視してた)

もぞもぞと吐き出し、他のマガタマに替えている人修羅。
それをさっきの部屋から見下ろすのは、ゴウトを連れたライドウ。
ゴウト『しかし、先刻まで張り巡らされていた結界、巫蠱るつぼを思い出すな。あの類は足を踏み入れずに済むならそれが最善だ』
ライドウ「まさか一介のイヌガミが創り出しているとは思いませんでしたね。他の悪魔を使役する所を見るに、かなり魔力が高い」
ゴウト『“マガタマ”なら、じゃんくしょっぷ等で幾度か見たろう。流通するという事は、今も何処かで産まれているのだ、あの蟲は』

開け放たれた押入れの中から、大瓶を取り出し抱えるライドウ。
犬の頭蓋と鼻を合わせ、微笑む。

ライドウ「定番ではありますが、初めて目の当たりにしましたよ……蠱毒。虫や爬虫類のみならず、犬までしてのけるとは豪胆で素晴らしい」
ゴウト『褒めるな愚かしい、強い呪いなど小童には扱いきれんだろう。生み出されたイヌガミは結局放置され、遺志を酌んで術を繰り返すのみ……誰も幸せになれん』
ライドウ「東京受胎でヒトが全滅するとは、夢にも思わぬでしょう。しかし思念体にもマネカタにも生っていないとすれば、ヒトの絶滅を察して成仏したのかもしれません」

近くをぐるぐると旋回するイヌガミは、黙ってライドウの挙動を見守っている。

ライドウ「フフ……しかし君は繋がれたままらしい。もののついでだ、解放してやる」

唱えつつ大瓶を壁に投げつけるライドウ。
大瓶は犬の頭蓋ごと粉々になり、乾いた土と共に白骨化した胴体が積もっている。
アオーンと一声哭いたイヌガミの首輪は風化し、イヌガミは窓から飛び立って行った。

ライドウ(大瓶の付近、押し入れ内に血痕染みが有った。恐らく子供は上手に首を斬れなかったのだろう。首が微妙に繋がったまま、イヌガミと化したのか)

土と破片の中から、首輪を拾い上げる。首輪のプレートには《puppy》(パピィ)と刻印されている。

ゴウト『人修羅もこれに懲りて、自ら虫篭へと身を投じる事はすまい』
ライドウ「もはや手遅れでしょうに」

窓から外を眺めつつライドウが答える。
見下ろす先で人修羅が、さらさらとした砂を掃って何かを拾い上げていた。
瘴気を放つ蟲を手に、そっと唇を開き舌を咬ませる人修羅。

ライドウ「僕等、円い虫篭の中に居るでしょう?」
   

END

イヌガミの創り方――
 壱.首だけを出し、地中へ生き埋めにした犬を用いる。
 弐.餓死寸前まで放置する。
 参.目の前に餌をちらつかせ極限まで飢餓へ追い込み、生への執着が高まった所を刎ねる。

拍手[2回]

PR

コメント

コメントを書く